1.平成21年度に実施した調査内容 アルゼンチンへの日本の詩歌の導入と現在までの受容のプロセスを調査するため、ブエノスアイレス市の「セイブ俳句グループ」、「東西学院」、「日本大使館付属日本文化情報センター」、「アルゼンチン共和国国立図書館」「ラ・プラタ報知」、ラ・プラタ市「ラ・プラタ・カトリック大学」およびコルドバ市「コルドバ大学」において、文献調査と聞き取り調査を実施した。 2.意義 (1)20世紀前半に渡亜した日本人移民による日本の詩歌導入の経緯について、普及活動の時期と地域、日本政府機関との関わり、日系新聞社の役割、日系人が運営する文化センター設立への協力等を明らかにする具体的な資料を収集した。日本の文芸の普及が墨絵、漆芸等の造形芸術とともに行われたこと、日本人移民の一部が現代俳句協会に属し前衛的な作風であること、また普及活動の中心となった移民の出身地が北海道や沖縄など日本の他国との境界地域に位置しており複数の視点を持っていたこと等、現在のスペイン語ハイクの性格を規定する要因のいくつかを見出すことができた。 (2)スペイン語のハイク、タンカ、センリュウ制作の現場に立ち会い、その生成のプロセスを観察することができた。アルゼンチンでは詩を制作するワークショップが多数存在し、スペイン詩の一ジャンルとしてのハイク・ワークショップも受け入れられやすい状況にある。このような場で、スペイン語ハイク等の詩形や詩学が検討され、他のスペイン語詩とは異なる新しい形式として練り上げられている現状を確認した。とりわけ西欧近代詩の個人主義への反省と「座の文学」への関心が認められた。
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