研究課題/領域番号 |
21520386
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
井尻 香代子 京都産業大学, 文化学部, 教授 (70232353)
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研究分担者 |
木村 榮一 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (80073344)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スペイン語ハイクの韻律 / スペイン語韻律法 / 日本語俳句の韻律 / 朗読資料 / 継続時間データベース / 複合的韻律 / 国際情報交換 |
研究概要 |
1.具体的内容 スペイン語ハイク作品の音声面に焦点を当て、スペイン語詩の伝統的韻律および日本の詩歌の韻律との比較を通して「スペイン語ハイクの韻律」を以下の方法で解明した。(1)スペイン語韻律法におけるハイクやタンカの扱いを調査し、伝統的なリズム単位構成による5音節や7音節の詩行の種類との関わりを検証した。(2)日本語俳句の韻律をめぐってこれまでに提示された主要な説(七五調説、混合拍子説)について、その韻律モデルのバリエーションを確認した。(3)スペイン語ハイクの書かれたテキストについて韻律分析を行った。(4)平成23年度の調査によって得られたアルゼンチンのスペイン語ハイク朗読の録音資料の分析を専門家に依頼し、その結果得られた音声の継続時間のデータベースに基づいて、テキスト朗読の際の音声的構造の分析を行った。 その結果、書かれたテキストの韻律分析のレベルでは、音節のカウント法、各詩行のリズム構成とその組み合わせ方法は、これまでのスペイン語定型詩の作詩法に基づいて行われていることが明らかになった。一方、完成された作品を朗読、口証する段階では、日本の俳句の持つ短詩形特有の韻律との共通点が現れた。とりわけ、日本の俳句の混合拍子説に現れる、2音節と3音節の単位を中心に音の長短の山を形成しつつ考証する形式は、スペイン語ハイクの音声継続データとほぼ一致することが証明された。 2.意義 アルゼンチン・ハイクは、スペイン語韻律法で書かれたテキストと、日本の俳句に通ずる口誦形式を併せ持った複合的な韻律を獲得していることが解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までの研究成果として、 (1)アルゼンチンにおける日本の俳句の受容プロセス(日本人移民経由およびヨーロッパの文学運動経由) (2)アルゼンチンのスペイン語ハイク制作および普及状況 (3)スペイン語ハイクにおける有季・無季のトピックの用法についての分析と俳諧との影響関係 (4)スペイン語韻律法、日本の俳句の韻律がスペイン語ハイクの韻律に及ぼした影響と特色 について明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究においては、次の2点を計画している。 (1)日本の詩歌において形成された自然観が、アルゼンチン・ハイクの制作・普及によってアルゼンチン人の価値観にどのような変化をもたらしたかを探る。 (2)幅広い地域、年齢、社会階層に広がるスペイン語ハイク制作状況の全容解明をとおして、現代アルゼンチン文化の特性を抒情詩の分野から明らかにする。
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