1. ミクロネシアが日本の統治下に置かれた時期から20世紀末にかけての、日本の文学や漫画・映画等の大衆文化の中で、ミクロネシアやその人々がどのように表象されてきたかを調べ、表象の系譜及び欧米における南洋表象との関係、さらにはミクロネシアの文化との関係を明らかにした。 2. 南洋・南島を描いた日本の文学と、現代の太平洋諸島(サモア、ハワイ、グアム)の英語作家の文学とを、欧米の南洋表象とのかかわりを基軸として、比較分析した。 3. 20世紀の太平洋世界において、植民地支配を契機とする人や文化の移動と混淆を基盤とした「ポストコロニアル」の歴史・思想の伝播と共有により、「島々と海」の表象ネットワークが形成され、それは日本を巻き込む形で見出すことができることを明らかにした。 以上3点を単著(英語)にまとめ、出版した。日本の南洋表象について英語で書かれた単著はこれまで存在しなかった。日本語による従来の研究においても、文学・文化を広範に扱い、欧米及び太平洋諸島との比較文学・文化研究を行った単著は例がない。日本の文学・文化を、「ポストコロニアル」という文脈において、「島々と海」の世界の中で捉え直すことにより、新たな視角を提示した。 4. パラオの伝統文化・精神が、欧米や日本との接触の中で「伝統」として成立した過程と、それらが日本の表象文化に与えた影響、及びそれらがパラオの文化においてどのような形で表象され、変化してきたかについて、明らかにした。
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