本研究の目的は、否定/文末詞の用法のジャナイ(下降調)が、頭高型、起伏型、平板型の語に接続するときに否定/文末詞の用法と判定されるピッチパタンを、ピッチを分析再合成した音声を用いた試聴実験を行って確定することである。 21年度は、実験語を決定、録音、音響分析を行った。 親密度が高い形容動詞で、語幹が2拍、アクセントが頭高型、起伏型、平板型の語として、タダダ、スキダ、トクダを選んだ。訓練を受けた話者がそれぞれの実験語に否定/文末詞のジャナイのついた文を発話し、録音室で収録した。その際、普通の話し方、はっきりした話し方、リラックスした話し方など7種類の話し方で録音した。 録音したサンプルについて音響分析を行った。2拍形容動詞に否定/文末詞のジャナイがついた文のピッチパタンは、(1)前接語のアクセント型の違い(2)否定/文末詞の用法の違いの二つを保持しながら実現しているといえる。その特徴は: (1)否定のピッチパタンに共通する特徴は、ピッチパタンが[前接語ジャ+ナイ]の二つの部分に分節できること、文末詞のピッチパタンの3語に共通する特徴は、前接部の大きなピッチの立ち上がりとそれにつづくジャナイにおける直線的な下降である。 (2)発話内のピッチの変動は文末詞のほうが大きい。否定はピッチの変動幅が小さい。 (3)文末詞のピッチパタンはジャまで、否定よりピッチが高い。 収録したサンプルの試聴実験を行い、否定/文末詞の用法として評価の高いサンプルを選んで、ピッチ加工の材料とする。そのための試聴実験用の刺激を作成中である。
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