否定/文末詞の用法のジャナイ(下降調)が、頭高型、起伏型、平板型の語に接続するときに否定/文末詞の用法と判定されるピッチパタンを、ピッチを分析再合成した音声を用いた試聴実験を行って確定することである。 親密度が高い形容動詞で、語幹が2拍、アクセントが頭高型、起伏型、平板型の語として、トクダ、タダダ、スキダを選び、実験語とした。訓練を受けた話者がそれぞれの実験語に否定/文末詞のジャナイのついた文を発話し、録音室で収録し、音響分析を行った。その結果、2拍形容動詞に否定/文末詞のジャナイがついた文のピッチパタンは、(1)前接語のアクセント型の違い(2)否定/文末詞の文法特性の違いの二つを保持しながら実現している。否定の3語のピッチパタンに共通する特徴は、ピッチパタンを[前接語ジャ+ナイ]の二つの部分に分節できることである。文末詞のピッチパタンの3語に共通する特徴は、前接部の大きなピッチの立ち上がりとそれにつづくジャナイにおける直線的な下降であり、文末詞ジャナイの持つ《主張》という強調的な意味に合致したピッチパタンとなっている。 22年度には、録音した否定と文末詞の音声をランダムに並べたものを刺激として、東京方言話者(首都圏出身者)による評価を行った。その結果評価が高かった音声の中で、ピッチの分析再合成に適したピッチパタンを有する音声を選んだ。今年度は、それぞれの用法のピッチパタンに特徴的と見られる部分を加工して試聴実験の刺激とする。試聴実験によって仮説を検証否定/文末詞の用法のピッチパタンを確定する。具体的には、否定音声は(1)前接部のピッチの山を高くする(2)ナイの山を低くする、の2種の加工をする。文末詞は最高ピッチの部分を低くする加工を行う。結果を報告書にまとめる。
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