研究概要 |
本研究は,アメリカ合衆国ラトガース大学準教授であるYoung-mee Cho氏を研究協力者(海外共同研究者)とし,平成21-23年度の3年度にわたり実施するものである。 また,本研究は,声調言語圏の伝統音楽のメロディー及びリズム形式を調査し,その結果をChoとの過去の共同研究で得られた他の韻律上の特徴を持つ言語圏の伝統音楽に関する研究結果と比較対照することにより,「伝統音楽の形式決定への言語情報の関与」という観点からの,新しい言語類型を提案することを目的としている。 この目的を達成するために,平成21年度には,北京語と広東語の言語学的特徴(韻律的特徴)並びに両言語圏の伝統音楽の特徴についての調査を行った。その結果得られた重要な知見の一つは,伝統音楽のリズム形式の決定に関してのものである。すなわち,北京語圏のわらべうた99の楽譜とその歌詞の朗読を入手し分析したところ,曲の冒頭部分にアウフタクト(=Auftakt [Ger.], upbeat [Eng.],弱起のリズム]が観察されない。このことをCho氏との過去の共同研究における,英語,ドイツ語,チェコ語,日本語の東京方言と福井方言,韓国語のソウル方言と慶尚南道方言,そしてこれら言語圏の伝統音楽のリズム形式に関する調査結果と照らし合わせると,表層における強勢の弁別機能が伝統音楽におけるアウフタクト生起の決定要因だ,と言えるのである。 平成22年度には,本年度の調査結果の洗練作業を行うとともに,研究の公開作業を行うことを計画している。
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