研究課題
研究の目的人間言語のチェイン構造解明のために、可視的連続循環移動を示すセラヤリーズ語のWH移動現象を綿密に調査し、どのようなチェインが可能であるかを明らかにすること。そのために、セラヤリーズ語の母語話者のHasan Basri博士の協力を仰ぐこと。研究成果の具体的内容本年度の調査で、セラヤリーズ語のチェイン形成において、2点の主語・目的語非対称性を発見した。1つ目の非対称性は、以下に示す通りである。本言語では、wh句が動詞を超えて移動する際、一致要素(-i)が削除されなければならない。これは、(1a)における目的語wh句移動に見られる。しかしながら、本言語は、動詞先頭言語であるにもかかわらず、主語のwh句移動においては、一致要素(-i)が削除されてはならない。これは、(1b)に示される。(1) a. apa la-?alle(^*-i) i Baso (object fronting) what 3-take(-3) h Baso 'What did Baso take?'b. inai la-?alle*(-i) kanre-njo (subject fronting) who 3-take(-3) food-the 'Who took the food?'さらに、2つ目の非対称性は、以下に示す通りである。本言語は、焦点名詞句は、動詞の前に移動するという特質も持っている。(2a)では、kanre-njo(その食べ物)、(2b)では、iBaso(バソ(人名))が焦点となり、動詞の前に移動した後、さらに、主語wh句移動と目的語wh句移動が起きている。しかしながら、(2b)だけが非文となる。(2) a. inai la-isse? i Ali kanre-njo la-?alle who 3-know h Ali food-the 3-take 'Who did Ali know that took the food? (Finer (1994 : 174))b. *apa la-isse? i Ali i Baso la-?alle what 3-know h Ali h Baso 3-take 'What did Ali know that Baso took?意義と重要性上記に示した2つの非対称性は、以下のことを示唆していると考えられる。主語のwh句は、実際には、移動しておらず、CPSPECに直接併合されるということである。このことから、本言語においては、主語のwh句を含む場合は、移動がなく、残余代名詞を利用したチェイン形成を行っていることが明らかになった。
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Proceedings of the 140th Meeting of the Linguistic Society of Japan
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Proceedings of the 2010 Seoul International Conference on Linguistics : Syntax
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