構文意味解析の前処理となる形態素解析について、前年度まで使用していた形態素解析器では、語彙の追加、既登録語彙情報の編集、形態素解析ルールの追加・編集等の作業コストが高く、これが構文意味解析器の開発速度に影響を与えていたため、新たに形態素解析器としてMeCabを導入した。また、これに伴い、形態素解析器と構文意味解析器の間の入出力インタフェース部分や概念辞書のデータ構造等に必要な修正を加えた。 開発中の構文意味解析器を、先行研究において開発された対話システムに構文意味解析モジュールとして組み込み(対話制御、応答文生成等の他のモジュールは、既存のモジュールを利用)、複数節・複数文間にまたがる情報を利用した構文意味解析について、その手法の検討・実装と、予備的な評価を行った。 本研究課題で採用している意味表現形式は、実体概念・現象概念の意味を属性・値の集合からなるフレームとして表現している。また、修飾語による被修飾語の意味の限定は、修飾語概念が持つ属性値を、被修飾語概念が持つ適切な属性値へ伝搬させることにより表現される。同様に、複数節・複数文間にまたがる意味の限定についても属性値の伝搬によってこれを表現するため、属性値の伝搬元となる概念と、伝搬先となる概念について、どのタイプの概念の間で伝搬が起こり得るかについて、依存構造のパターンごとに網羅的な検討を行い、伝搬が起こる場合の属性値の伝搬手法をまとめた。これに加えて、実対話例に基づく検討を行い、属性値の伝搬に関する依存構造パターンとは独立した条件を検討した。 上記の検討をもとに複数節・複数文間にまたがる属性値の伝搬手法を実装し、予備的な評価を行った。この結果、本研究で開発した属性値の伝搬手法により、実験データの91%において、伝搬先候補の中に適切な伝搬先が含まれることを確認した。
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