研究課題/領域番号 |
21520398
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
近藤 真 静岡大学, 情報学部, 教授 (30225627)
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キーワード | 言語学 / 計算機科学 / 構文意味解析 |
研究概要 |
本研究で採用している意味表現は自立語の意味がフレームで表現されており、各フレームは属性・値のペアの集合として記述されている。前年度までの設計では、この値には語自体が持つ値(システムの知識に該当)を格納する知識値と、他の語による修飾等に基づいて決定される値を格納する修飾値の2種類が準備されていた。例えば、固有名詞に関連した知識は、その固有名詞に該当するフレームの知識値に格納される。また、ある概念の属性値が統語的な修飾関係に基づいて決定される場合、修飾語フレーム内の各属性値が、被修飾語フレーム内の対応する修飾値へと伝搬される。いっぽう、対話においては先行文で言及された現象・実体等が後続文の内容によってさらに意味的な限定を受けたり、逆に先行文の内容から後続文で言及される現象・実体等が意味的な限定を受けることも少なくない。このような事例に対応するため、統語的な修飾関係によらない意味の限定を表現するための伝搬値を新たに設け、それにあわせてシステムのデータ構造の変更を行った。 修飾関係に基づく意味の限定は、構文意味解析器による構文解析が成功する限りにおいて、曖昧性のない解釈結果が得られる。例えば、宿泊現象の宿泊施設属性の値がXホテルである場合、Xホテルの存在場所属性の知識値を宿泊現象の宿泊場所属性に伝搬することが常に可能である。いっぽう、文境界をまたぐ意味の限定(値の伝搬)は完全に文脈依存であり、入力文中の現象・実体等が文脈中のどの現象・実体等に対応するかに依存してる。そのため、知識値・修飾値と区別して伝搬値を設けることにより、対話システムが解釈を誤った場合の再解釈の制御が容易になることが期待される。また、データ構造変更後の構文意味解析器を、本研究と並行して開発されている教育用日本語対話訓練システムに組み込み、データ構造の変更による悪影響がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
統語的な修飾関係に基づく意味の限定を表現するための手法はほぼ完成してる。また、文境界をまたぐ意味の限定についても、入力文中の現象・実体等と、それに対応する文脈中の現象・実体等が概念階層上で上位下位、もしくは全体部分関係にある場合については、適切な値の伝搬が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
現在残っている大きな課題の一つが、概念階層上で上位下位、もしくは全体部分関係にない概念どうしでの文境界をまたぐ意味の限定を表現する手法の確立である。文境界をまたぐ意味の限定は、入力文中で言及される現象と文脈中の現象との関係を同定することにより達成されると考えられる。そのため、上位下位・全体部分関係にない現象群が、1つのより大きな上位現象を構成する場合に着目し、そのような場合に上位現象を構成している各現象間でどのような意味の限定が起こり得るのかについて検討し、その検討に基づき上位下位・全体部分関係にない現象間での意味の限定を表現する手法を確立する。
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