研究課題
本研究が追求するのは、1つの文や発話の中でのパースペクトの混在を知らせ、知るための言語的方略の実態とその背後にある仕組みを明らかにすることである。そのために、今年度はまず該当するデータの収集と分析に努めた(設備備品費等)。同時に、研究費の交付以前から追及してきたパースペクト・シフターとしての括弧について、括弧を括弧付けられる要素の著者、および、それが評価される特定の(可能)世界を出力として与える一種の内包的関数として捉えることにより、データで観察された括弧の引き起こすパースペクト・シフトの多様性をうまく説明できることを明らかにした。この研究成果は、International Conference on Generative Lexicon(2009年9月)において口頭発表された(旅費)。また、テンスもパースペクト・シフターの1つであると見なす立場から、日本語の従属節に稀に観察される絶対的時制の成立についてデータの分析を行った。その結果、絶対的テンスの解釈をもつ従属節のタイプは直接話法の領域と境を接し、それとの境界がはっきりと規定できない自由間接話法と類似点を持つことをつきとめた。そこで、これを記述し適切に分析するために、時制には可能世界や状況を値域とする(顕在化されない)時間的変項を含まれる、と仮定し、これを束縛する関数λと時間的変項が同一指標を持つか否かに基づいて従属節の時制解釈を規定する解釈枠組を暫定的に提出した。この研究結果は日本認知科学会において発表された(旅費)。
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神戸大学言語学論叢 7(印刷中(掲載確定))
A.Rumshisky and Calzolari, N.(eds.)Proceedings of GL 2009
ページ: 19-26
第26回日本認知科学会大会発表論文集
ページ: 278-279