研究課題
前年度に引き続きデータの収集とその整理・分析を重ねた。(設備備品費・旅費等)今年度は特に、従属節におけるテンスのシフトを主たる研究対象領域とし、所謂相対的テンス(de dicto読み)をデフォルトとするタイプの従属節でありながら、相対的テンスではない読みが成立するだけでなく、時制形式もデフォルトがタ形であればル形、逆に、ル形であればタ形が選択されるという意味と形式の例外的マッチングを認可する事例に着目した。そして、新たに、命題内容を記述する視点者(PIVOT)がSELF(the one whose "mind" is being reported)か、あるいは、SOURCE(the one who makes the report-speaker-)かに関して検討した結果、例外的時制解釈を認可する従属節では、SOURCEあるいはPROがPIVOTでde se読みを持つこと、他方で、de dicto読みが生じる場合には相対的テンスが成立することが明らかになった。次に、このことを明示的に示すための分析装置について検討した。その結果、動詞と義務的に結びつけられる時制代名詞を仮定することの有用性を確認することができた。この例外的時制解釈を与える時制代名詞は、de se読みを持つ点においてlogophoric pronounと同じ特性を持ち、temporal pronounにもlogophoric pronounが存在すること示すものである。こうして引き起こされる例外的な時制解釈は、当該の従属節の表す事象が評価されるべき主文以外の世界の存在を示唆する点でパースペクト・シフターとして重要な役割を有することを示している。この結果は、従来の研究が看過してきた時制におけるlogophoricityの存在とその機能上の有用性を新たに照射するという点においてその意義は小さくない、と考えるれる。
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Proceedings of the 24^<th> Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation
ページ: 311-320