本研究の主たる目的は「認知言語学の理論的成果が、思考の表出プロセスから見た英語ライティングの指導と向上に資する方途の探求」である。当該年度に実施した研究成果は、この目的を具体的に実行する第一次的な基礎資料となるものであり、交付申請書(研究計画)記載の以下の事項に概ね該当する。(1)当研究課題に該当する関連諸文献の蒐集(2)実際の講義等から得られたデータの整理(3)(2)をもとにした「エラー」の定義と分類である。 以下、(1)~(3)の具体的内容を記載する。(1)本研究は応用認知言語学分野に属するが、研究史の歴史が浅いということもあり、手始めに当該分野の確立と定着を念頭においた文献蒐集が望まれる。そのため、狭い専門文献に限定せず、日英語の作文教育、翻訳論、思考の表出・発想に関わる文化論、哲学、外国人作家の日本語文献など、幅広い文献資料の蒐集を心がけた。(2)本研究の研究者2名はともに英作文、ライティング指導等の英語教育に関わっており、講義・演習等を通じて本研究に資するデータを蓄積しつつあり、今後も継続する。(3)日本人の英語ライティングエラーには、語法・文法・発想など種々異質のエラーが相互に関連しあい、また一定のエラー傾向をもって出現することが判明しつつある。こうしたエラー特性の一部を認知言語学理論に依拠したモデルから説明可能であることを示した。 引き続きエラー特性の整理と解明に進むが、以上の研究成果は、母語干渉による思考表出の特性を客観化して示すことに向けられている。このことによって、英語発想世界に受け入れられる分かりやすい表出とはどのようなものか、ひいてはグローバル化しつつある英語の運用能力の向上に寄与する教育的方向性とはいかなるものか、などを解明する点において意義を有している。
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