本研究の主たる目的は「認知言語学の理論的成果が、思考の表出プロセスから見た英語ライティングの指導と向上に資する方途の探求」である。当該年度に実施した研究成果は、この目的を具体的に実行する中間段階の基礎資料となるものであり、交付申請書(研究計画)記載の以下の事項に概ね該当する。(1)当研究課題に該当する関連諸文献の蒐集。(2)実際の講義等から得られたデータの整理。(3)(2)をもとにした「エラー」の定義と分類。 (4)認知言語学モデルによる(3)の解析と実践応用への展開、である。 以下、(3)(4)の具体的内容を記載する。(3)日本人の英語ライティングエラーには、語法・文法・発想など種々異質のエラーが相互に関連しあい、一定のエラー傾向をもって出現することが判明しつつある。(4)認知言語学の「捉え方(construal)」に基づけば、(3)のエラー特性と傾向に対して一定の説明が可能である。当該年度の成果は、こうした説明の具体的方向性とその教育実践への応用展開の方向付けを行った点にある。 以上の研究成果は、母語干渉による思考表出の特性を客観化して示すことによって、今後の日本人英語ならびにその教育実践上の望ましい方向性を示唆する。それは、グローバル化しつつある英語の運用能力の向上に寄与する教育実践のあり方などを解明する点において意義を有している。
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