本研究の主たる目的は「認知言語学の理論的成果が、思考の表出プロセスから見た英語ライティングの指導と向上に資する方途の探求」である。当該年度に実施した研究成果は、おおむね、この目的の最終段階に相当する。交付申請書の以下の事項に該当する。(1)認知言語学における理論モデル(プロトタイプモデル、スキーマモデル、使用基盤モデル等)が実際の教育・実践面でどのように生かされるべきか。(2)学部・大学院レベルにおける思考の表出プロセス(具体的には、英語で書くアカデミック・ライティング)の指導に貢献できる方途とはいかなるものか。研究実施計画では、応用認知言語学を基盤に、発想・捉え方の視点から学習・指導に資する方途を目指す、となっている。 以下、当該年度の成果について述べる。まず、(1)(2)の具体的内容を記載する。認知言語学には「捉え方」といった専門用語があり、日英語には各々好まれる「捉え方」が存在するとする仮説がある。この仮説を基に英語が好む「捉え方」を具体的に分析、指摘した上で、それらを実戦的な英語ライティング指導に生かす方途を考えた。また、メタファーにも英語的捉え方と日本語的捉え方の異同が見られ、このことを考察した上で、効果的なライティングに結びつける方法を探究した。 以上、日英語の思考表出の特性を把握することによって、日本語を母語とする学習者に、できうる限り英語発想世界に受け入れられる分かりやすい表出の指針などを、具体的かつ発展的に考察した。これらの成果は、応用認知言語学分野における学術的意義を有しており、今後の学術的進展の基盤として重要性を有する。
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