優れた考えであってもそれを適切に表現できないため、誤解されたり消化不良のままで終わるコミュニケーションが多い。このことは日本人学生における英語ライティングにおいて顕著である。この問題は大学および大学院におけるライティング指導のみならず中高等教育における英作文・英文法指導のあり方にも端を発している可能性がある。認知言語学は言語使用の実際と言語経験に焦点を当てた「用法基盤モデル」に依拠しており、それに基づいた応用認知言語学は英語ライティングの実践的指導の向上に資する可能性が高い。そこで、本研究は応用認知言語学に基づき、認知言語学の理論的成果を実践的な英語ライティング指導に活用する方途の解明を目的にした。教室現場等から採集した英語ライティングのエラーデータをもとに、その分布を文法特徴、テキスト構成などの視点から分析した。その結果、一定の傾向・特性の現れを確認し、それらを理論的に解明することによって、実践的指導に生かす新たな方途を提言した。具体的には、日英語における事態の「捉え方」の異同、活用メタファーの異同、思考展開スタイルの異同を明らかにした。これによって、グローバル化しつつある現在の英語コミュニケーションにおいて、より自然な英語発想に基づくライティングとその指導の方向性を明らかにした。
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