本研究は「指示(reference)」を社会的行為とみなす立場から、 I 会話において話し手は聞き手との間でどのように指示対象の認識を確立するか II 指示を確立することによってどのような活動が成し遂げられるか、考察することを目的とし、日常会話においてストーリー・テリング場面で行われる人物指示(person reference)の事例を取り上げ、 (1) 相互行為を通してどのように指示対象の認識が確立されるのか、 (2) 指示を確立することがストーリー・テリング活動の達成にどのような影響を与えるか、という観点から分析を試みるものである。 平成21年度は、上記目的を遂行するために必要なデータの収集と整理を行なった。初対面および親しい間柄による対面会話を収録するため、協力者を募り、撮影方法と人権保護対策について説明して了解を得た上で、ビデオカメラによる会話場面の撮影を行なった。全体で2人会話を6組、3人会話を3組、(うち初対面会話4組を含む)を収録した。話題のきっかけとして、「最近起こったこと」「楽しかったこと」などの例を示したが、途中で話題が逸れても気にせず会話を進めてもらった。撮影後、人権保護の観点から削除すべきデータの有無について確認した。データはJeffersonの方法を用いて書記化作業を行なったが、基礎的な作業は資料整理補助者に依頼した。平成22年度はこのデータを用いて具体的な分析に取り組む。
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