研究課題/領域番号 |
21520411
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
児玉 望 熊本大学, 文学部, 教授 (60225456)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 音声学 / アクセント / 語声調 / ドラヴィダ諸語 |
研究概要 |
インド諸言語の韻律分析に関連しては、ハイダラーバード市のインド情報工学研究所において、自然言語処理研究班を訪問し、音声言語処理研究チームの主任研究員および研究チームと面談し、談話音声データのインドにおける韻律構造分析や談話音声資料の集積に関する情報を収集した。また、マンガロール市において、同市を拠点とするケーブルテレビ局のカンナダ語番組、トゥル語番組など、地域方言の特徴的な韻律特徴を例示する音声資料を収集した。 ハイダラーバード市で開催された国際テルグ学会には、日程の都合で参加できなかったものの、世界各地の非識字テルグ話者向けに発信されたテルグ語音声による大会案内資料を入手した。 日本語諸方言の韻律特徴の分析に関連しては、特に、音韻語の境界をピッチ表示するタイプの方言において、境界付近のピッチ変化の位置がある程度可変的になることが多いとみられることに着目して、集中的にこのような特徴をもつ九州の諸方言の談話音声資料の韻律特徴を分析した。このピッチ変異の可変性は、京阪アクセントや東京式アクセントのような、ピッチ変異位置の対立が有意味なピッチアクセントと大きく異なることから、ピッチアクセント諸方言と可変ピッチ(語声調)諸方言との史的関係を考察し、『音声研究』誌に投稿した。 現地調査としては、上記の仮説に従えば、九州諸方言のアクセント史において重要な特徴をもつと予想される対馬地域のアクセントを、特に談話音声の観点から再分析するために、対馬市上対馬町と厳原町において音声資料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題申請時においては、談話音声の韻律構造階層に普遍性があると仮定し、すべての階層の境界を音韻表示する際にピッチが関与する言語類型として、インド諸言語と、一型アクセントを含む九州諸方言の談話音声資料の分析と、ラベリング方式の開発を実施することを意図していた。この予想は、ほぼ達成されたと考えているが、九州諸方言の中には、音韻語レベルでは境界表示をしないという特徴をもつ体系が存在することや、境界表示をする型の音声的実現においては、いわゆるピッチアクセント方言と異なり。ピッチ変位が可変的である傾向が強いことなど、今後の研究に大いに示唆的な結果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
ピッチアクセント類型や音節声調類型とは異なる語声調類型として、ピッチの境界特徴の可変性を積極的な特徴とみなし、ピッチアクセントを前提としないアクセント研究の方法を考案し、また、日本語諸方言においては、日本語アクセント系統史を見直す方向で研究を進めていく。
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