言語の音節のうち、音節の端の位置に存在する子音の分布を考えた場合、子音群(cluster)がどれほど許容されるのか、それが許されない場合にどのような優先順位で分節音が削除されるのか、または母音挿入が起こるのか、ということは、分節音の聞こえ度の大小に基づく素性情報、また、どれほど当該の分節音が音節の端に近いのかという音節構造上の情報など、様々な要因が複雑に作用し、実際の出力形を得るが、その状況は言語により、また、形態素の交替形の種類により様々である。また、一般的にいって、頭子音(onset)と末尾子音(coda)では非対称的なふるまいをみせる。 研究期間初年度にあたる当年度では、これまでの研究を概観する形で、主に考察に用いる理論である最適性理論(Optimality Theory)のこれまでの発展を概観し、その中で、特にcodaでの子音の分布について、フランス語の男女交替形にみられる音韻削除、朝鮮語の複合音節末子音群の単子音化の条件などを有機的に関連させてまとめた上、codaに比べると子音連続の分布が限定的であるonset位置における子音連続(onset cluster)の状況について、例外的にonset clusterが豊冨にみられるカンボジア語でのonset clusterの分布状況を概観して、coda位置での子音の保持のされ方などと関運させて、子音の有標性に基づくonset codaの相互の非対称件を考える下地とした。当研究は「音節境界における子音連続の回避と保持の条件」と題する論文にまとめる予定である。
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