言語の音節のうち、音節の端の位置に存在する子音の分布を考えた場合、子音群(cluster)がどれほど許容されるのか、それが許されない場合にどのような優先順位で分節音が削除されるのか、または母音挿入が起こるのか、ということは、分節音の聞こえ度の大小に基づく素性情報、また、どれほど当該の分節音が音節の端に近いのかという音節構造上の情報など、様々な要因が複雑に作用し、実際の出力形を得るが、その状況は言語により、また、形態素の交替形の種類により様々である。また、一般的にいって、頭子音(onset)と末尾子音(coda)では非対称的なふるまいをみせる。 当平成22年度では、子音連続の分布や回避をめぐるonsetとcodaでの非対称性について、これまで研究代表者が行ってきた諸言語の分析から全体的に概観したものを「音節末端部における子音連続の回避と保持の条件」と題する論文にまとめた。また、そのうちの、今後取り組むべき課題として残したカンボジア語のonset clusterの分布について、分節音のきこえ、気息性などいくつかの異なる条件に基づく有標性の序列について研究し、「カンボジア語における頭子音連続の序列について」と題する口頭発表を行った。
|