研究初年度に当たる今年度は、以下の表に記したとおり、論文2編(いずれも単著)、学会発表1件(単独発表)、著書3冊(共著2冊、単著1冊)を発表することができた。 論文2編はアイスランド語を扱っているが、話題の中心は19世紀ロマン主義の高揚に伴う歴史比較言語学研究にあり、印欧語歴史比較言語学研究およびゲルマン語歴史比較言語学の創始者の一人であるデンマーク人の言語学者R.ラスク(Rasmus Kristian Rask)の業績の評価を含んでおり、そのフリジア語研究の意義に言及している。学会発表はこの趣旨に全面的に従って行ったものである。 著書としては、まず、上記の論文の趣旨に沿うものをアイスランド文学の歴史に沿って論述した単著『北欧アイスランド文学の歩み』がある。同書はすでに日本独文学会の学会誌『ドイツ文学』(Neue Beitrage zur Germanistik)の次年度の号に書評として取り上げられることが決定している。次に、フリジア語使用地域のひとつであるオランダ語圏の言語研究の歴史を扱った共著『言語研究の諸相』所収の「オランダ語研究の歴史と言語規範の形成」では、フリジア語研究の足跡とフリジア語擁護の変遷についても言及した。最後に、『事典世界のことば141』では、与えられた紙面でフリジア語の概略を与えた。同書は各種の雑誌や新聞にも紹介され、社会的・教育的貢献が少なくない。 以上のとおり、研究初年度の成果としては十分な成果を挙げたとみなすことができよう。
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