研究2年目に当たる今年度は、以下の表に記したとおり、論文3編(いずれも単著)、著書2冊(いずれも共著)を発表し、招待講演1件を行った。 論文3編はゲルマン語歴史比較言語学とアイスランド語の音韻をフリジア語との関連で扱ったものである。最初の1編は、19世紀ゲルマン語歴史比較言語学の誕生を跡づけ、古フリジア語文法の最初の著者であるデンマーク人の言語学者R.ラスク(Rasmus Kristian Rask)の業績評価とフリジア語研究の意義に言及した。後の2編は、標準発音を欠くアイスランド語の音韻と日本語への転写の考察を通じて、同じく標準語の規範が不明確なフリジア語の音韻の考察に役立てることを目指した。 2冊の著書(共著)は、北フリジア語の概説と上記の後の論文2編の改訂版を施したものである。前者は日本で初めての市販された北フリジア語の概説である。後者は申請者が2010年5月から会長を務めている「日本アイスランド学会」の創立30周年を記念して、北海道大学文学研究科から刊行助成金を得て、一部に出版費用に当てる形で、申請者が編者として刊行した論文集に収められている。本書は日本で初めて出版されたアイスランド研究にかんする専門的な論文集といえる。 最後に、ヨーロッパ諸言語の系統と歴史的発達について、招待講演を行った。これはとくに本研究の成果を社会的・教育的貢献として役立てることを意図したものである。 以上のとおり、研究2年度の成果としては、十分な業績を挙げることができたといえる。
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