研究課題/領域番号 |
21520425
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 誠 北海道大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40162713)
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キーワード | フリジア語 / フリジア語 / 英語 / ドイツ語 |
研究概要 |
研究3年目に当たる今年度は、以下の表に記したとおり、論文3編(いずれも単著)を発表し、研究発表2件を行った。 論文3編はゲルマン語歴史比較言語学にかんするものである。「ゲルマン語の歴史と構造(2)-ゲルマン祖語の特徴(1)-」は、前年度に発表した「ゲルマン語の歴史と構造(1)-歴史言語学と比較方法-」の続編であり、ゲルマン語の由来とその歴史言語学的分類、および古フリジア語が属する北海ゲルマン語を含めて、古ゲルマン諸語のデータをもとに,ゲルマン祖語に由来する諸特徴を歴史比較言語学の方法で論じたものである。「ゲルマン語の歴史と構造(3)-ゲルマン祖語の特徴(2)、古ゲルマン諸語(1)-」および「ゲルマン語の歴史と構造(4)-古ゲルマン諸語(2)」はその続編をなすもので、古ゲルマン諸語の音韻と形態にかんする諸特徴、とくに子音推移、母音交替、ウムラウト、強変化動詞と弱変化動詞、名詞の文法範疇、形容詞弱変化の発達を取り上げた。 研究発表は2件行った。「ゲルマン語の「nの脱落」と形容詞弱変化の非文法化」は、上記の最後の論文で扱った形容詞弱変化の発達に加えて、現代ゲルマン諸語でのその衰退と機能変化を「nの脱落」という音韻変化に関連づけて論じたものである。この発表は、2011年12月に申請者がその中心的メンバーの一人として設立した全国規模の学会である「日本歴史言語学会」の第1回総会・研究発表会(大阪大学)の席上で行ったものである。申請者はまた、同学会の理事に選出された。もうひとつの発表「北海の言語」は北海道大学北方研究教育センター主催の講演会で行われたもので、北ドイツで話されている北フリジア語の特徴とその歴史および言語擁護を内容としている。 以上のとおり、研究3年度の成果として、十分な業績を挙げることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始年度以来、すでに総計で2桁の論文および著書を刊行しており、その成果は当初の計画をしのぐ勢いとなっている。学会活動においても、日本アイスランド学会会長に選出され、同学会創立30周年を記念する論文集を刊行し、そのさいには北海道大学文学研究科から出版補助金を獲得した。また、昨年末には日本歴史言語学会をその中心メンバーの一人として設立し、同学会の理事に就任した。本研究に関連するこうした学会活動は、当初の計画にはまったくなかったものであり、この点でも、当初の計画以上に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度については、上記の4編の論文の続編をまとめ、大手出版社から単行本の形にして出版したいと考えている。また、フリジア語が属する西ゲルマン語の多くに特徴的な枠構造の発達と解消、右枠成分の動詞群の語順的変異について、学会発表をする予定である。さらに、申請者が会長をつとめる日本アイスランド学会の大会開催、理事をつとめる日本歴史言語学会の学会誌創刊に尽力したい。両学会は本研究と内容的に密接に関係しており、そこでの情報交換や交流からは、研究の進展にとって大きな示唆を得られるものと期待される。
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