研究全体の方向性を決定するために、まずドイツ語助動詞の文法化に関する最新の研究動向を調査した。また、テキスト言語学的手法を用いたドイツ語史研究の研究成果についても調査を行った。 その上で21年度は特に過去表現に注目しながらドイツ語の助動詞の調査を行うことを決定し、各種テキストから動詞用例を網羅的に採集し、データベースを作成した。調査したテキストは次の通りである(長大なものは一部のみデータベース化)。文学作品:Notker der Deutsche" Martianus Capella"(11世紀始め)約13000語、Notker der Deutsche "De consolatione philosophiae"(11世紀始め)約12000語、Hartmann von Aue "Der arme Heinrich"(1190年前後)約7500語、Johan Wolfgang Goethe "Die Wahlverwandtschaften"(1809年)約23500語、Heinrich Boll "Ansichten eines Clowns"(1963年)約25000語。学術書:Notker der Deutsche "Categoriae"(11世紀始め)約8000語、"Summa theologica"(14世紀)約10000語。戯曲:"Das Innsbrucker Osterspiel"(1391年)約8000語。網羅的なデータに基づくデータベースを構築したので、今後別の現象に注目した研究をする際にも利用が可能である。 こうして構築したデータベースの調査から特にわかったのは、16世紀からと言われることの多いドイツ語の現在完了形の過去時制としての用法の定着がもっと早い段階からあった可能性が高いことである。また、この用法はテキスト上の環境にかなり依存することも明らかにできた。こうした成果は22年度に順次様々な学会・研究会で発表することが確定している。
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