研究課題/領域番号 |
21520426
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒田 享 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00292491)
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キーワード | 独語 / 言語学 / 通時言語学 / テキスト言語学 / 助動詞 / 文法化 |
研究概要 |
23年度の研究においてはまず、研究初年度から行っているテキストデータベースの構築を継続した。23年度はNotker der Deutscheによる聖書詩編の古高ドイツ語訳、Otfrid von Weissenburgの『福音書』、中高ドイツ語による説教集"Speculum Ecclesiae"、H. J. C. Grimmelshausenによる"Simplicissimus Teutsch"といた文献をデータベース化した。これによって22年度までに作業を行った部分とも合わせ、ドイツ語の様々な歴史的段階において成立した文芸書や実用書、またその中間の性質を持つテキストを含んだ大規模なコーパスが得られた。これはドイツ語の各種助動詞の文法化の進行過程と文法体系上の位置づけの変化、そしてそうしたドイツ語史上の変化の流れとテキストの性格の関連について実証的に考察するためのデータを抽出する基礎資料になる。このコーパスから抽出した用例を基に各種助動詞の性質の歴史的変化とテキストの性格の関連について分析を行った。特に着目したのは、テンス・ヴォイス・アスペクトなどの範疇に関係する各種助動詞とそれと競合関係にある他の表現形式である。 23年度はまた、歴史的言語資料の性格を測定する方法に関して詳細に検討することもできた。この問題については、近年注目されている「歴史語用論」において盛んに議論されてきたが、本研究に関してはAgel/Hennig 2007が提唱する口語性測定モデルが特に有効であることが明らかになった。このモデルを用いることにより本研究も当初予定以上に効率良く進めることができるようになる。また、研究の途中成果をベルリン・フンボルト大学と上智大学において口頭で発表し、関連領域の研究者と詳しい意見交換を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の基礎資料となるテキストデータベースの構築は21年度から継続して行っているが、23年度までに当初計画よりもある程度順調に作業が進んでいる。また、これまでの研究の過程で当初の計画よりも効率的な分析手法が確立できたので、現時点で研究目的の達成に充分な規模のテキストデータベースが得られている。また、発表した中間成果に基づいて内外の関連領域の研究者から研究上の助言も得られ、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が本研究課題の最終年度であるが、基礎資料収集が当初計画よりも順調に進んだため、今後は資料の収集よりも分析に重点を置いた形での研究を進めることにする。ただし必要性が明らかになった場合は、補完的な資料収集を行う。
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