研究課題
前年度に日本認知言語学会で発表した論文の論文集が平成21年6月に出版された。この論文では、Sidaama語には池上のいう「する」型の言語と「なる」型の言語の両方の特徴がいくつもあり、英語と日本語を2つの類型的パターンの両極端に置くことに疑問を投げかけた。平成21年5月のアフリカ言語地理的類型論の国際シンポジウムでは、ハイランド・イースト・クシ語派のSidaama語とKambaata語のデータを示し、ある数以上の共有された特徴をもとにアフリカを一つの言語地理領域とみなすHeine & Leyew(2008)の仮説がこれらの言語にはうまく当てはまらないこと、特徴を数値化して言語地理領域を特徴付けることに問題があることを指摘した。平成21年6月の日本言語学会では、Sidaama語の目的語人称接尾辞が表すのは目的語という文法関係のみならず、イベントによって影響を受ける人間であるということを示した。平成21年8月のLACUS (Linguistic Association of Canada and the United States)では、Sidaama語のクリティックによって形成される名詞句について記述し、名詞句にヘッドという概念は必要かどうかという問題(Dryer 2004)を扱った。平成21年9月と22年3月のアジア・アフリカ言語文化研究所の研究会においては、それぞれSidaama語の名詞句に関わる理論的問題とSidaama語の文法現象の記述においての問題についての発表をした。平成22年2月18日~3月16日にSidaama Zoneでフィールドワークを行ない、すべての章にわたってディサテーションの改訂を進め、テキストのデータを集め、さらに次の年度の論文発表のための準備をした。以上の研究の成果は、これまでに記述されていない言語の現象を記述しているという点、およびそれらの現象を考慮に入れられていないことによる問題点を指摘しているという点で価値がある。さらに、出版した論文2本のうち1本に、5つの口頭発表のうち2つに英語を使っているので、成果の発表が国際的である。
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日本認知言語学会論文集第9巻(Proceedings of the Ninth Annual Meeting of the Japanese Cognitive Linguistics Association) 9
ページ: 339-349
日本言語学会第138回大会予稿集 138
ページ: 166-171
http://www.kazuhirokawachi.com/