研究課題
平成21年度にアフリカ言語地理的類型論の国際シンポジウムで発表した論文が、平成23年5月に本の1章としてJohn Benjaminsから出版された。Heine&Leyew(2008)はある数以上の文法的特徴が見られるかどうかによりアフリカという言語地域を定義しているが、この論文では、Sidaama語とKambaata語にはそのような特徴は多くはみられないことを示し、彼らの方法論の問題点を指摘した。平成22年5月の東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所「節連結に関する通言語的研究」研究会では、Sidaama語の節の連結パターンの概観を行い、理論的問題について論じた。平成22年7月のLinguistic Association of Canada and the United Statesでは、Sidaama語を始めとするハイランド・イースト・クシ語派の言語が有標主格言語であるという仮説(Konig 2006,2008)の基盤になっているデータの分析の間違いを指摘した。平成22年9月の日本認知言語学会第11回大会では、Sidaama語の移動表現が動詞枠付け言語のパターンに従わない事例を示し、マクロイヴェントとは何かという問題を扱った。平成22年10月のInternational Workshop on Cross-linguistic Studies on Clause Combiningでは、Sidaama語の複数の動詞を組み合わせて作る二つの構文の意味的結びつきと統語的結びつきについて記述し、今までに言われてきた意味と統語の関係に従わない例について議論した。平成22年1月の「地球ことば村-世界言語博物館」のことばのサロン講演会では、言語学者と言語学が専門でない人たちから成る聴衆に対して、Sidaama語の社会文化的背景・使用状況と文法構造の特徴についての講演を行った。平成23年3月3日~3月27日にSidaama Zoneでフィールドワークを行ない、例文等の細部の確認をすることによりディサテーションの改訂を進め、論文執筆のためのデータ収集をした。以上の研究の成果は、これまでに研究されていない言語のデータを収集し、言語現象を記述し、個別言語の問題にとどまらず、言語類型論から見た理論的な問題に取り組んでいるという点で価値がある。
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John Benjamins(Geographical Typology and Linguistic Areas-with Special Reference to Africa.Amsterdam)(Hieda, Osamu, Christa Konig, and Hirosi Nakagawa (eds.))
ページ: 91-108
日本認知言語学会第11回大会予稿集
ページ: 121-124
http://www.kazuhirokawachi.com/