研究概要 |
昨年度の試行調査では、テキストや文に現れた語彙は連想に基づくネットワークを作っていると仮定し、本研究をイディオムや狭い意味でのコロケーションとは異なる「連想コロケーション」の探求と位置付け、これに基づいて次の3点に関して本格調査を開始した。 (1)環境保護と自動車関連の分野別コーパスを拡大させた。その際、国立国語研究所で行われた医療用語の難解語・重要語の抽出方法を参考にした。これに基づいて「連想コロケーション」のいくつかの例について調査を行った。分野によって語の意味が限定されること、それにより限定的な語彙の連鎖が見られることなどが明らかになった。今後さらに分野別コーパスの拡充が必要である。 (2)「連想コロケーション」の概念をさらに精密にするために、ドイツ語の程度副詞(形容詞の表す状態の程度が高いことを表す副詞)と形容詞の結びつきを大規模コーパスを用いて調査した。これにより、(1)単なる語の結合として記憶されていると思われる例(recht herzlich,sehr wohlなど)と(2)程度副詞と形容詞が意味的に関連していると思われる例があり、(2)はさらに(2a)ある語とある意味範囲が関連していると思われる例(denkbar+knapp,schlechtなど)と(2b)ある意味範囲とある意味範囲が関連していると思われる例(besonders,sehr+gut,wichtigなど)があるとの仮説に達した。詳しい調査結果は井口(2011)で報告している。 (3)文における語彙の現れはどのような情報からどの程度予測できるのかという観点から、beginnen+4格とbeginnen mit+3格の違いを目的語名詞に含意された「行為の明示性」(動詞派生名詞かどうかの形態的特徴を手がかりとした意味的分類)や副詞規定、文脈などに基づいてより詳しく検討した。詳しい調査結果は恒川(2011)で報告している。 上記のような調査を考慮しながら、和独辞典や教材への応用という観点からも検討を始めた。
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