台湾原住民諸語のひとつであるルカイ語および、他の台湾原住民諸語やフィリピン諸語、インドネシア諸語などの関連諸語について、そのフォーカス体系の実態を調査した。その結果、豊富な文交替を許す、いわゆるフィリピン・タイプのフォーカス体系のあり方には差異が見られ、例えばタガログ語(フィリピン)やパイワン語(台湾)がフィリピン・タイプの典型だとすると、ルカイ語は一見対格型体系に近い、非常に限られたフォーカス体系を有することがわかった。これは、バリ語(インドネシア)にも類似した現象が見られ、フォーカス体系の縮小という観点で捉えることによってフィリピン・タイプの諸言語を統一的に捉えることができることを示唆した。
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