本年度は中国甘粛省、青海省のモンゴル系孤立諸言語(河湟語)の全体像を明らかにすること、およびモンゴル系言語の歴史研究、言語接触研究に貢献することを目的に、佐藤と角道がそれぞれ以下の研究をおこなった。 佐藤は、これまでの調査および8月の調査に基づき保安語積石山方言にかんする以下の研究をおこなった。 1. ピンインに基づいたローマ字を利用した母語話者が容易に使える「保安語漢語辞典」を作成する作業を、保安族の若手学者とともに進行中。 2. 「保安語のテキスト」の正式公開に向けて作業を進行中。 3. 主観範疇と客観範疇の対立など、未解明の文法項目について整理を進行中。 角道は、下記について研究をおこなった。 1. 保安語に大量に借用された漢語(大河家方言)の連読変調の実態調査を進行中。 2. 「iの折れ」の記述について先行研究を再検討し、河湟語の実態を検討。 3. Svantessonのpreaspiration説の妥当性を検討し、その過程で以下のデータベースを作成。 (1) 内蒙古の諸方言における語頭子音の有声化 (2) 河湟語の子音の有声化、無声化 4. 現行の辞書類において取り上げられていないため意味が不明である土族語互助方言の語が用いられているコンテキストを調べ上げ意味を推定する作業を進行中。
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