本年度は青森県沿海方言に関する詳細な語彙、アクセントの調査を行う。予定では各地域3名の協力者としていたが、そのように少ない協力者数であっても年齢や地域性というほぼ確実な質的不変化要素から、2か所異なったところで合計7名の協力を得た。調査した語と談話のアクセントのデータベースから行った分析結果を報告書の一部としてまとめ、国内・国際学会で口頭発表を行った後、論文として著す予定にしていたが、協力者の人数の関係などで、現時点では進捗状況としては少々遅れている。 予定した調査地域、調査期間と協力者は(1)むつ市大湊浜町(調査期間:平成21年8月27日~31日)、(2)下北郡東通村砂子又(平成21年9月1日~5日)における協力者としてその土地生え抜きの古老(80歳以上)を4名紹介してもらい、後者は協力者が高齢のため、調査不可能となり、上北郡横浜町に変更し、3名の協力者を得て調査した。むつ市と横浜町は距離的には30km離れているが、横浜町は下北半島の南部から半島の5分の2程度の位置にある町であり、その点では予定の太平洋岸にある東通村砂子又より半島の西に位置し津軽湾に面しているところであるので、今回の調査ではアイヌ語のアクセント型の変化、またはその影響力の分布も見えてくる可能性がある。 調査する語彙リストの基礎語彙は1拍語から3拍語まで200項目程度(名詞、動詞、形容詞とそれぞれの品詞の単独形と接続形)のアクセントだけに焦点をあわせ、高感度マイクで収録した。次に語彙項目を発音してもらった後に、対話や面談を行い、高感度マイクで録音し、文レベルに渡り調査した。今回、協力者は役場、特に教育委員会にお願いし、1週間に渡ってアクセント、談話の細部まで収録、録音した。 現段階ではこの基礎語彙200語と自由談話の分析を行っており、この3月中にはアイヌ語の影響と思われるものの大きさが結論として出せる状況になっている。どちらの結果が出てこようと、アイヌ語の影響力の大きさが分かるとともに、その分布が明確になると考えられる。その成果はこの7月の国際学会で発表し、最終的にはその学会誌に載せる予定である。
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