本計画二年目は、初年度に訪れた中国吉林省伊通満族自治区を再訪し、同地での満洲語民族教育の中心地である満族博物館において満洲語教育の情報収集をし、そこで用いられている初級教育用テキストを長春の東北師範大学満語文化研究所で入手した。また、伊通市街での満洲文字看板表記を数日にわたり実地調査し、画像を収集した。これは、後日訪問した、河北省豊寧満族自治県の市街の満文看板表記と比較するためである。これらは満洲語民族教育の実態と社会における満文表記の使用実例を研究するデータとして蓄積された。共に現地にあって初めて入手可能な価値有る言語資料の一端である。 さらに、北京を中心とする現代満洲語研究のため、三週間同地に滞在して北京市社会科学院満語文化研究所所長趙志強氏をはじめ、中央民族大学教授趙令志氏ら研究者との交流・情報交換をすると共に、民大図書館で未研究の文献『満蒙消遺』の電子資料化を行い、また今後の研究対象となる文献『満洲緒論』を中国社会科学院民族学研究所図書館で閲覧し、初歩的調査を行った。 これまで収集した満洲語初等教育テキストに、昨年訪中時に入手した近刊のCD付き満洲語会話集を加えて三点となり、それぞれの教育上の価値を比較した研究が「現代中国における満洲語教育教材比較研究-東北三省の初等教育から-」『言語情報学研究』第7号である。そこでは、比較分析の初期段階として文字と読音について、それぞれのテキストがどのように扱っているかを、先行する文語研究との比較の観点から論じた。
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