研究概要 |
本研究はテクスト構成からみた,日本語とフランス語の特徴を,対照言語学的観点から明らかにするものである。その中で平成21年度は特に,「日本語は,フランス語に比べて,遂行性に関して高。」という仮説の検証に費やした。フランス語の呼びかけに使われる親族名称名詞(Papa, Mamanなど)を,文学作品,インターネット上の投稿文,作例など,さまざまなデータを資料として検討し,その遂行的性格を明らかにした。この遂行的性格は,程度の差はあれ,罵り語,職業名詞,敬称表現,呼びかけ語など,他のいくつかの名詞(句)にも見られる。そのフランス語の結果を,日本語の同様の名詞(句)と対照させ,一括して遂行名詞と名付け,その性質を言語ごとに明らかにした。その結果,この遂行的性格は,日本語の名詞でより顕著に現れることを示した。またこの現象は,1人称の地位が日本語では特権的であることとの関わりを研究した。これらの違いが日本語とフランス語のテクストの性質の違いに寄与していると思われる。この点は,来年度以降の研究でさらに深化させたい。 以上の研究成果発表は来年度に集中的に,国際学会における発表,研究論文の出版という形で行う予定である。 また,平成23年度に本格的に取り組む予定であった教材開発に関しては,参考文献の収集が予想よりも順調にすすんだことなどもあり,かなり当初の予定を先取りすることができた。資料の研究が進み,教材の中身に関しては,予定していた分量の約半分の量を作成できた。
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