研究概要 |
本年度行った研究活動は,現地調査・学会報告・論文執筆の3つである。 1. 現地調査:語彙の確認と文法調査を,台湾新竹県竹北市にて2009年8月24日~28日および2010年3月8日~3月12日の2回,計10目間おこなった。語彙については,報告書の語彙篇作成のため,3月の調査から最終確認作業に入っているが,今回は全体の約3分の2程度を終えることができた。文法調査は,本年度は主として補語についてのものを継続しておこない,多くの有益なデータを得ることができた。 2. 学会報告:国外(フランス・パリ)と国内(東京)でそれぞれ1回おこなった。内容はいずれも文法に関するものである。フランスで行われたIACL-17(International Association of Chinese Linguistics)では,前年度までの調査に基づき,完了アスペクト系列(完結・既然・完了)につての報告をおこなった。海陸客家語における完了相系列には,完結相「掉」・既然相「了」の各標識が存在する一方,完了相は特定の標識がないことを指摘し,それらを整理・体系化して提示した上で,通時的には文末の既然相標識がまず発達し,動詞直後の完結相標識はアスペクト標識への文法化の途中にある可能性があることを指摘した。また,国内の研究会では,補語の一つである状態補語についての報告をおこなった。本報告では,状態補語標識には,「到」「倒」および無標識の3つがあることを指摘し,「到」「倒」については,新たな文法化の経路を提案した。 3. 論文執筆:国外の学会誌および学内の出版物に各1本執筆した。内容はいずれもアスペクトに関するものである。『臺灣語文研究』(台湾・臺灣語文學會)に掲載のものは,完了相系列標識のもので,2. で言及したIACL-17での報告の一部を踏まえたものである。また,中央大学人文科学研究所叢書に掲載のものは,完了相系列・非完了相系列全体についで考察したもめである。なお,いずれも本報告書執筆時現在で,掲載決定印刷中の状態である。
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