研究概要 |
本年度行った研究活動は,現地調査・学会報告・論文執筆・語彙集執筆の4つである。 1.現地調査:語彙の確認と文法調査を台湾新竹県竹北市にて2011年8月21日~27日および2012年2月26日~3月2日の2回,合計9日間おこなった。語彙については,語彙集の最終確認をおこなった。文法調査は,本年度は主として結果補語構造およびモダリティ標識である「有」について調査をおこない,多くの有益なデータを得ることができた。 2.学会報告:中国・天津の南開大学で開催されたInternational Association of Chinese Linguisticsの第19回大会で学術報告をおこなった。報告題目は「台湾海陸客語的動結述補結構」(台湾海陸客家語の動詞結果補語構造)である。北方漢語を基礎にしている標準中国語の動詞(V)+結果補語(R)構造は、複合動詞といえるほど融合している。一方、海陸客家語では、VとRの間に、動詞の目的語・否定詞・モダリティ標識・使役標識など、さまざまな成分の挿入が可能であることを提示、Rの独立性の強さを指摘した。あわせて中国南方および東南アジアの孤立語と並行する現象であることを指摘し、VR構造を動詞連続の枠組みでとらえなおすことが可能であることを主張した。 3.論文執筆:学内の出版物である『中央大学論集』に1本執筆した.題目は「台湾海陸家客音系與有關語音現象」(台湾海陸客家語の音韻体系とその他の音声的現象について)である。本論のポイントは、声調を音響音声学的な分析を通して、視覚的に提示したことである。そのほか、関連する音声現象(規則的な声調交替とそれが適用されない場合の条件・負規則的な声調交替・リエゾン・有声閉鎖音・鼻音化声母など)について考察した。 4.語彙集執筆:約5000語を収録している語彙集の最終的な整理・記述をおこなった。
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