日本の法廷で使用される通訳が困難な用語・表現について、模擬法廷などを通して通訳者の訳出データを入手し、それを検討しながら、最適と思われる訳語表現を決めて対訳集にまとめることを本研究の目標としているが、平成22年度末に予定をしていた関東での法律実務家との検討会が震災の影響でキャンセルになった。 繰り越し分を使用した研究成果としては、年度中にできなかった法律家との会合を6月に行った事である。日米の法律に詳しく法廷通訳の経験も豊かな米軍法律顧問である関沢紘一氏に名古屋に来ていただき、2日間にわたって検討会を行った。その検討会では法律専門用語や法廷特有の表現に的を絞り、日本法と英米法の差異に基づく表現の違いなどを中心に検討した。議論された内容をICレコーダーに録音しておき、それを取りまとめながら、最適な訳出表現を絞り込んでいった。さらに議論の必要なものについてはメールのやり取りを行って調整していき、最終的にかなりの数の対訳表現を決定することができた。また、訳語決定過程において、適宜アメリカ人の法律家の意見も取り入れるなどしたことで、英語ネイティブにとって不自然でない表現を実現することができた。さらに、法廷通訳問題に詳しい甲南大学法科大学院院長の渡辺ぎしゅう教授の意見もうかがい、内容について間違いのないようにした。これにより、対訳集の「法律用語編」の内容がほぼ固まったことになる。このように、単に法律専門家に監修を依頼するのではなく、実際に検討会を行う事で、研究の学際性が高まったことになる。
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