22年度は、初年度に書き起こしが終了した3本の紙芝居のうち2本を学生の協力を得て紙芝居化した。また、12月にその紙芝居を村落へ持って行き、上演を行った。また、紙芳居をパソコンに取り込み、それぞれの物語の絵本も同時に作成し、村落で配布した。紙芝居は、2つの村で上演を行ってもらっているが、文字を読みなれていないため、スムーズに話を進めることが難しい現状にある。また、絵本は逆に個人のペースで読あるので、大人には評判が良かった。紙芝居および絵本の文字はテーヴァナーガリ文字を用い、作成した正書法に従った形で表記している。 12月には、更に4編の物語の書き起こしが完了した。これらも含め7編の物語を物語集としてまとめる作業を平行して行っている。 また、カトマンズ在住の協力者の助けを得て、現在、4000語の語彙を収めた辞書を制作している。辞書の語彙データは、XMLで格納し、最終的には自作プログラムを用いてコンパイル、ドラフトの製版を行った。現在、各見出し項目の校正を行っており、23年8月までに最終ドラフトを完成する予定である。 3月には、西ベンガルからアッサムにかけて境界の集落を訪問し、両州におけるボド語(メチェ語)の方言差の調査を行った。その結果、両州を分ける川を境に、西ベンガル・ネパール方言が単一の方言を形成し、アッサム州の西側方言とは文法において異なりがあることが分かった。この調査によってメチェ語とボド語との地理的な関係がかなり明らかになったと言える。 本研究の目的のひとつである文法体系記述の充実については、物語の分析および辞書作成を通じて新たな言語現象や事実が判明した。特に、基幹動詞に付加しアスペクト、様態、モダリティなどの意味を表す動詞接辞の体系がかなり明らかになってきた。この内容については、23年9月に神戸で行われるヒマラヤ諸言語学会において報告予定である。
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