22年度は下記の研究を行った。(1)2010.7月-8月にかけてネパールにてカイケ語の現地調査を実施した。調査では主に更なる語彙の収集を行ない、特に収集が難しい、使用頻度がそう高くないと思われる動詞の発見作業に従事した。結果、100を超える動詞を掘り出し、その音調と活用を特定した。またそれを中心とした文例の収集を行なう中で、新しい語彙の発見、その意味の特定と文法パターンの確認作業を行なった。(2)2010.12月-2011.1月にかけてネパールにてカイケ語の現地調査を実施した。調査では主に、夏の調査(とそれ以前に)で収集したデータの確認、修正と、更なる語彙の収集と音調の特定を行なった。(3)現地調査で収集したデータを分析し、特に音調構造に関する理論構築を更に進めた。(4)現地調査で収集したカイケ語の語彙およびその音韻/音調構造と、以前に収集したタマン諸語、チベット語諸方言、その他のヒマラヤ諸語、チベット=ビルマ諸語の語彙、およびその音韻/音調構造と比較、分析し、同源形の推定、借用語の特定などの作業を進めた。(5)これまでの研究成果を2010年9月にイギリス・ロンドンで開催された国際学会「The 16th Himalayan Languages Symposium」にて「Internal diversity in the Tamangic lexicon」として発表した。(6)本年度の研究成果を来年度夏に開かれる国際学会にて発表するべく、データの整理と論文執筆の準備を進めた。(7)新しく発表/刊行されたヒマラヤ諸語(特にチベット語方言、ブータン周辺のチベット系言語)についての論文/データ等を分析し、(4)で述べた言語比較作業上必要な理論的検討作業を進めた。
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