研究概要 |
自己の発話を遅らせて話者に聞かせる遅延聴覚フィードバック(Delayed Auditory feedback, DAF)を与えると、流暢な発話が阻害されることが報告されている。一方で、DAFの影響をほとんど受けない話者がいることも知られている。本研究ではDAFの影響の受けやすさの異なる話者を被験者としてDAF条件下での発話時の脳活動計測を行う。影響の異なる話者間での活動領域の違いから、DAF条件下での行動の差の原因となる脳内での発話生成および聴取の処理の違いを明らかにし、発話生成系の神経経路と聴取系の神経経路の連携関係を明らかにすることが本研究の目的である。 23年度は、これまでに行った行動実験と脳活動計測の本実験の結果の解析と結果の発表を行った。 代表者らは遅延聴覚フィードバック(DAF)条件と通常のフィードバック条件下で発話をおこなう際の脳活動をfMRIを用いて前年度に計測した。そのデータを話者のDAFの影響の受けやすさの指標との相関関係で解析した結果、DAFの影響を受けにくい被験者ではDAF条件下での発話時に、DAFの影響を受けやすい被験者よりも、運動前野や島皮質前部の活動が高くなっているが、聴覚連合野での活動はDAFの影響の受けやすさとは相関しないことが明らかになった。このことからDAFの影響を受けにくい被験者は発話運動のプログラミングおよびコントロールに関与する脳領域の活動が活発になることによりDAF条件下での発話を比較的流暢に行うことができていることが示された。これらの結果を,2011年6月にカナダのモントリオールで開かれた国際学会(9th International Seminaron Speech Production)で発表した。
|