本研究は、現代日本共通語の基盤となっている首都圏方言の調査・分析を目的とし、東京および東京周辺地域において、音声・アクセントを中心とする質問法調査および自然談話の収録、そしてその分析を行っている。 平成21度は、山梨県上野原市、埼玉県南埼玉郡白岡町、静岡県賀茂郡松崎町、静岡市において、調査を実施した。 上野原市は、東京都に隣接しているが、アクセントには東京方言で古いとされる発音が聞かれ、イントネーションにも、東京とは異なる特徴が見られることを確認した。埼玉県白岡町は、埼玉特殊アクセントとして有名な地域の中にあるが、若年層においてはすでに、その特徴はあまり目立たなくなっている。しかし、老年層は、従来のアクセントを今も保持していることを、読み上げ式調査および自然談話から確認し、自然談話については文字化作業を行った。静岡県松崎町では、周辺地域とは様相を異にするアクセントについて調査を行うとともに方言語彙の調査を行った。静岡市においては、談話の収録とおよそ35年前に実施した言語地理学的調査の結果と対比するための調査行った。その結果、現在70歳代の人々は語頭のP音をはじめ、伝統的な方言を使用していることが確認された。これら採取した資料は現在分析中である。また、松崎町で収録された自然談話の資料から、準体助詞と準体法の用法の分析を行った。 今回調査した地点の方言については、少数を除きほとんどなされていない上、いずれの地域においても伝統的な方言は現在の老年層以下の世代には見られなくなってきている。その点で、この記録は今後の研究のためにも有用であると考える。 また、現在の若い世代における首都圏方言を見るため、東京にある大学の学生を対象とするアンケート調査を行い、その結果を分析した。現在首都圏で起こりつつある変化の一端を記述分析することができたと考える。
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