神奈川県小田原市において方言調査を行った。調査はアクセント、文法(推量の助動詞べーの用法が中心)、食に関する語彙についてが主である。アクセントは昨年度実施した山梨県上野原市と同様、類別語彙と複合語などの調査を行い、東京語の古い発音が確認された。べーは東日本方言に広く見られる形式であるが、その用法は地域によって異なる。今回はべーの使用地域でも最も西に近い方言での用法を確認したものである。また食に関する語彙は山梨県上野原市、静岡県賀茂郡松崎町等でも調査してきたが、来年度これらの地点との比較を行う予定である。 この他に、一人称代名詞としての「自分」の使用について、歴史的に見た。この語は軍隊用語そして現代では階級社会的な組織にいる人やその出身者が用いる語であるが、日本において軍隊が組織された明治期の文献にはあまり見られない。それがいつ頃から用いられるようになったのか、また陸軍軍人に広く用いられるようになった理由について推測を行った。 さらに、現代の首都圏の大学に在学する学生と対象とする調査を行い、若者のアクセントに対する意識や首都圏の特に若年層広まりつつある終助詞「し」や「普通に」の用法及びその広まりについて考察を行った。 また、松崎方言の談話資料により、そのアクセントについて分析を行っている。この方言は東京式アクセントではあるが、これまでもその特殊性で有名であるが、これまでの研究は名詞を中心としていた。今回は、動詞や形容詞など他の品詞についても考察を広げている。
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