動詞句が表す事象(event)の内的構造、特に事象に終了時点があるかどうかについての研究は、従来、動詞の性質に基づいて行われてきた。例えば事象の終了時点に存在する場所を表す着点句は、日本語では(1)「駅に行く」は自然であり(2)「駅に歩く」は非文だが、英語では(3)" John went to the station"、(4)" John walked to the station"のどちらも自然である。この事実は従来、「行く」とgoは同じ性質を持つが、「歩く」とwalkはそうではないと説明されてきた。しかし、本研究では、(2)と(4)の適格性の違いを、動詞の性質の違いではなく、日本語の後置詞即ち助詞の「に」と英語の前置詞のtoの性質の違いから説明する。
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