研究課題
本研究の目的は、現代の敬語使用を従来の文法や運用の面からだけではなく、多様な要因からその分析をおこない、敬語使用の実態を捉えていくことである。また、敬語調査における問題点、今後の敬語研究の可能性も見いだすことも視野において研究していった。一年目には、言語外情報の一つである視覚に着目し、それらがどのように敬語の使用に影響を与えるかについて二回にわたり調査をした。ネット調査で質問文のみ、質問文に加えて回答者から見て異なる服装や性別といった言語外の情報を与えた人物図を提示したものの両方を設定した。結果として、敬語の使用には、視覚清報(質問文に図を加えたもの)の有無は大きく関わらないことがわかった。二年目には人々の言語意識やWWW調査自体に関わる問題について調査をおこなってきた。一年目の調査の結果を踏まえて、敬語に関わる質問を様々な年代の回答者に尋ねる調査をおこなった。加えて、WWW調査において登録している回答者はどのような属性のひとなのかについても併せて調査もおこなった。結果として、WWW調査の回答者は20代から30代、40代の会社員、主婦(夫)などといった年代、職業のひとが多く、趣向も偏りがあり、ネット回答者自体の「属性」というものがあることがわかった。今後、WWWを調査媒体とする際のメリットとデメリットがあるため、敬語調査に使用するにはその点を踏まえておこなう必要があろう。最終年の三年目には、二年間の調査を終えての結果の考察および、反省、また敬語の使用実態についての調査、およびWWW調査だけではわからないことをインタビュー調査でたずねることをした。本研究では、敬語調査においては従来の研究方法のほか、WWW調査も有効であることはわかった。しかし、年代、地域や職業といった敬語使用に少なからず影響する要因を持つ回答者に偏りがある点を見逃さないようにしたい。また、敬語使用に影響はあるも複数回の調査により、敬語の使用実態を細かく調査することができた。
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学術の動向
巻: Vol.16, No.5 ページ: 104-107