人間言語の統語研究は、現在、フェイズ(phase)という演算単位を設け(Chomsky 1999他)、演算システムに見られる簡略性や経済性の特性を導き出せるか否かの検証が進めれている。本年度は3年計画の初年度として、【A】再構築化規象におけるvPフェイズの機能と【B】wh移動のタイプとvPフェイズとの関係の分析を行った。 例文(1)と(2)の対比は長距離wh移動の経由位置の重要性を示し、例文(3)は強制された再構築化解釈でvP位置(●標示)が再構築化ポイントとして利用可能なことを示す。一方、(4)はvPドメインが再構築化ポイントとして利用できないことを示す。 (1)?[how many pictures of John_ido you think he_i will like?(Huang 1993) (2)*[how many pictures of John_i]does he_i think I like?(同上) (3)[which(of the)papers that he_j gave Ms.Brown_i]did every student_i ● ask her_i to read carefully?(Fox 1999) (4)?*[which pictures of John_i]does he_i ● like?(Lebeaux 1988) これは(1)項と付加詞の導入の相違、(2)フェイズ毎のTransfer、(3)解釈規則の派生的適応(Epstein et al.1998)の枠組みでは区別できない。代案として、フェイズとLCA(Kayne 1994)により、フェイズでのwh句形成を認め、また、形成された統語構造内のターム間にc統御関係の確立を求めることにより、wh移動の終着点以前の段階でwh句形成を完了する説明モデルを構築した。
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