研究概要 |
本研究目的は、日英語の名詞節化形式と意味・機能がどのようなメカニズムで取り結ばれているのかを原理的に解明することである。研究初年度の本年度は実証的研究を目指し、研究対象の日英語構文に関する基礎的資料を収集、観察、分析した。また、基本的文法概念や問題点を整理しながら、本研究課題の名詞節化現象を理論的枠組みの中で分析する基礎を構築し、言語学の研究成果を英語教育に活用する方策についても検討を進めた。本年度の成果実績として、学術図書(『「の(だ)」に対応する英語の構文』(単著)356pp.ISBN:978-4-87424-464-7,くろしお出版,2009年.)を挙げることができる。本学術図書は、「の(だ)」に対応する英語構文の諸特性の解明を試みた大竹(2008)(博士(応用言語学)学位論文「「の(だ)」に対応する英語の構文」)に本研究で得られた知見を反映させて加筆修正を施し、平成21年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費(学術図書)(研究代表者:大竹芳夫),日本学術振興会,課題番号215060)の助成を受けて刊行したものである。本学術図書は、(i)「の(だ)」と対応する英語構文を統一的な見地から比較検証することにより「の(だ)」の本質により深く迫ることができた点、(ii)従来は個別的に論ぜられてきた日英語の名詞節化形式について、両言語を共通の視点から比較・対照しながら認知や知覚の対象を言語化するプロセスの異同を原理的に明らかにした点、(iii)国内の研究者に先駆的知見を直ちに還元できるように、英語の実例すべてに対訳を付した豊富な言語資料を提供しており、英語学、日本語学、世界の諸言語研究を含む広い関連分野に対して波及性が高い研究内容である点に特徴がある。本年度の研究成果は学術論文・図書に取りまとめられて社会に迅速かつ広範に還元されており、当初の目標を達成することができた。次年度以降は本年度の知見をさらに深化、発展させながら、成果を国内外に向けて積極的に発信する予定である。
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