研究概要 |
本研究目的は、日英語の名詞節化形式と意味・機能がどのようなメカニズムで取り結ばれているのかを原理的に解明することである。本年度は、初年度の研究成果である学術図書(『「の(だ)」に対応する英語の構文』(単著)356pp.,くろしお出版,2009年.【平成21年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費(学術図書),日本学術振興会,課題番号215060】)が増刷され、英語学分野のみならず日本語学や日本語教育等の関連分野でも引用を受けていることから、本書で示した知見が各分野でどのような意義をもち、理論的枠組みに位置づけられるのかについて検討を開始した。また、大竹(2011)では、what kind of疑問文(=(1))と、不定冠詞を伴うwhat kind of {a/an}疑問文(=(2))に用いられる名詞句の意味特性に着目しながら、両疑問文の意味と機能を考察した。(1)What kind of dinosaur is that?/(2)What kind of a dinosaur is that?具体的には、両疑問文に生ずる名詞句には特別な含意を派生しやすい二つのタイプがあることを明らかにした。"idiot"のようなタイプの名詞句を伴うwhat kind of疑問文とwhat kind of {a/an}疑問文は、直接的に愚行、醜行を認定して侮ってあざける含意を派生する。一方、"mother"のようなタイプの名詞句を伴うwhat kind of疑問文とwhat kind of {a/an}疑問文は反語的機能をもち、名詞句の表す範疇区分に共通して認められる性質や属性を話題中の人物が有していないという話し手の意識下で発話されるため叱責や問責の態度表出といった機能、ときには世辞や褒詞の表明といった機能も帯びることを確認した。次年度は本年度の知見をさらに深化、発展させながら、得られた研究成果を国内外に向けて積極的に発信してゆく。
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