研究概要 |
本年度に次の2点について研究を実施した。その内容と重要性・意義等は次の通りである。 (1)研究は、生成文法理論(すなわち、普遍文法理論)の枠組みで「純粋のWH疑問文」「問い返しの疑問文」「多重WH疑問文」を対象とし、この理論の妥当性を検証するものである。本年度は、生成文法理論を知る上で最も重要な論文(Chomsky(2004,2007,2008))を読み、「素性」の種類・内容、変形操作としての「併合」「一致」、変形に関わる「フェイズ」という概念や「フェイズ不可侵制約」など、本研究の基盤となる理論の概念・制約等の理解に努めた。また、本研究に関わる疑問文の分析方法を把握し、この方法の妥当性についても検証した。その結果、フェイズに基づいた分析をさまぎまなWh移動現象に適通したところ、適切に説明できないものがあることが判明した。 (2)このように理論的な基盤を固める一方で、具体的なデータ収集を行った。特に、本年度は「純粋のWH疑問文」に焦点をあてて、英語だけではなく、スラブ語やブルガリア語などのヨーロッパ諸語、アジア・アフリカ諸語に見られるWH疑問文のデータ収集をした。これらのデータは、言語学の論文・著書にかなり多く載っているので、それらを読み、分析方法を理解しつつ、言語データを収集した。 本研究の目的は、さまざまな言語のWh疑問文に照らして最新の生成文法理論(=普遍文法理論)の妥当性を検証することにある。したがって、本研究において、(1)理論的な枠組みを理解することと(2)各種言語のデータ収集は車の両輪に等しく重要なことである。本年度は、(2)において、この理論の最も重要な論文を精読し、基本的な考え方、概念、制約や条件、分析方法等を正確に把握できた。また、(2)において、数には限りがあるものの、本研究にとって重要と思われる言語データを収集できた。これらの成果は、本研究を今後2年間継続して行うにあたり、一つの基礎となるものであるので、その意味でたいへん有意義なものである。
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