研究概要 |
1.本研究の本年度の目的は、普遍文法理論の妥当性を検証するために、「多重WH疑問文」等の疑問文に関して、さまざまな言語を調査・研究し、類型化を行うことであった。具体的には、WH句の移動が随意的になる英語タイプの言語、WH句が移動しない日本語タイプの言語、WH句が義務的に移動するスラブ語タイプの言語、その他の構文をとる中国語タイプの言語に類型化し、その特性を明らかにすることであった。 2.そこで、まず、本研究の理論的基盤である普遍文法理論(原理とパラメターのアプローチ、ミニマリスト・プログラム)に関する論文や著書を読み、「多重WH疑問文」の分析方法を把握するとともに、問題点の検討を行った。 2.次に、「多重WH疑問文」について、これまでLinguistic Iguiry, Language, Linguistic Review, English Liguisticsなどの学術研究誌や国内外の学会で発表された分析方法の妥当性を検討するとともに、そこで提示された言語資料をデータ・ベース化した。データ・ベース化した言語は、英語、ドイツ語、フランス語のほか、スラブ語やブルガリア語などのヨーロッパ諸語、アジア・アフリカ諸語などであった。 3.さらに、日本英語学会、日本英文学会、関西言語学会、日本言語学会などの国内学会に参加し、「多重WH疑問文」の研究者と意見を交換した。また、海外の大学(オーストラリア国立大学)の専門家とも意見を交換した。 4.本年度が本研究の最終年度であるので、これまで収集された言語データを整理し、先行研究で提案されているさまざまな言語分析を比較検討しつつ、専門家たちとも意見を交換して、その研究成果を次頁に示すように、論文1本と著書(共著)2冊にまとめた。 5.本研究において、普遍文法の「原理とパラメターのアプローチ」と「ミニマリト・プログラム」が「多重WH疑問文」の通言語的多様性を適切に説明できるかを検討し、上記のような研究成果をあげることができたことはたいへん意義のあることだと思われる。
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