研究概要 |
本研究は、節と名詞表現の類似性と違いを、最新の生成文法の理論的観点から考察し、極性、演算子のスコープ等の問題を射程にいれた実証的な研究を行うことにより、文法理論構築への貢献を目指すものである。2009年度は、Rizzi(1997, 2004)の機能範疇分割理論と、Chomsky(2008)のミニマリスト・プログラムにおけるフェーズ理論に照らし、節構造の研究としては、CPがフェーズと呼ばれる領域(特定の条件下で要素の移動を制限する領域)を形成しその一部に極性領域にかかわる機能範疇を想定するPolP分析の妥当性を英語の諸現象を中心に検証した。その理論的意義としては、Chomsky(2008)のフェーズ理論の問題点を指摘し、それが、極性現象に関してとるべき方向付けを明らかにしたことにある。(その成果は、西岡(2010:印刷中)として公刊される。)また、名詞表現の研究としては、英語名詞句の内部構造解明の一環として、節構造と同様に、フェーズが名詞内部にも確認されるかという点についての知見を得るため、英語名詞句からの疑問詞の取り出しおよび、名詞句の受動化などについて分析し、名詞句内にもフェーズが存在することを示唆する証拠を得た。また、名詞句内部にフェーズの存在を仮定することの妥当性を示すため、英語動名詞句が示す種々の文法特性について考察し、その仮定により、従来の研究よりも、これらの諸特性を合理的に説明できることを示した。(その成果は、増富(2009), Masutomi(2010)として公刊済みである。
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