本研究は、節と名詞表現の類似性と違いを、最新の生成文法の理論的観点から考察し、極性、演算子のスコープ等の問題を射程にいれた実証的な研究を行うことにより、文法理論構築への貢献を目指すものである。Chomsky(2008)のミニマリスト・プログラムにおけるフェーズ理論では文の派生の単位として、フェーズ(phase)を想定し、意味・音へ送り出す単位(トランスファー領域)を規定している。平成22年度は、平成21年度におこなったフェーズ理論における極性ならびに移動に関する分析を継承、発展させ、トランスファー領域に関するフェーズ理論の意義と問題点を明らかにした。まず、動詞句に関するvPフェーズと名詞句に関するnPフェーズの内部構造に焦点をあて、CPフェーズとDPフェーズとの並行性と違いを探求した。本研究代表者がvPフェーズに関して研究し、極性ならびに焦点化に関するNegPとFocPの位置づけを中心にCPフェーズにおけるPolPとの関係をさぐった。さらに、移動した要素が元の位置で解釈されるかどうかという再構築現象を英語、日本語を中心に考え、移動がトランスファー領域を超えるかどうかが再構築現象を考えるにあたり重要であることを明らかにした。その成果の一部は西岡(2010)として公表しており、また西岡(2011)として公表予定である。 また、分担者がnPフェーズについての研究を行い、DPフェーズならびにvPフェーズとの並行性を探求し、同様にnP内での極性に関する機能範疇の存在の可能性とNの補部要素との関係を考察し、要素の抜き取りとスコープの問題を解明した。その成果は増冨(2011)として公表予定である。
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