2009年7月26日~8月3日開催予定で、同年1月15日に採択通知も届いた米国UC Berkeleyでの第11回国際認知言語学会中止の知らせは、同年3月17日に突然届いたため、既に今年度の他の国際学会の締切に間に合わず、今年度は国際学会での発表機会を失い、国内の学会発表のみとなった。しかしその分4年間の本研究の礎となる研究や、これ迄未知の分野だった歴史・社会言語学系研究の文献分析に専念できた。 本年度は、古英語期から現代迄、現在分詞V-ingの語幹Vとしてconstrueされる事態のaspectはLangackerの定義によるPerfective・Imperfectiveを問わないのに、現代英語の進行形の場合だけPerfectiveでなければならない制約がある理由を追求した。特に、これ迄進行形との関連では重視されなかった、考古学・言語社会学的な研究の成果や、中英語の口語文献における(be)+V-ingとMiddle Welshの文献における動名詞構文との意味機能の類似性に着目することにより、制約は、現代英語の進行形が、元々はCelt系言語で進行の意味を表すbe動詞+前置詞(特にin)+動作名詞の構文にcalqueの形で影響を受けた庶民の口語表現から発達したからである可能性が高いことがわかった。また、本主張は、古英語期では女性名詞だったV-ing形が中英語に於いて動名詞への発達したことを示すIrwin(1967)のデータや、古英語期から存在する前置詞+動作名詞の意味機能、これまでも言及されてきた中世から19世紀までの進行の意味を表す構造の変遷やあり方、現代英語の単純形と進行形の使い分けの原形とも考えられるMiddle Welshの構文とNon-emphatic Doと進行形の関わり等、様々な角度から検証・照合しても、辻褄が合うことを示した。
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